この手紙の表書き

 この手紙の表書きには本所区向島須崎町八九番地とあって日附は三月十一日になっているが、年号はちょっとわからない、兎に角我輩が早稲田鶴巻町にいる時分使に持たせてよこしたので郵便ではなかったからスタンプもない、これを今T君に筆記をして貰っている今日、即ち昭和九年の六月十八日にはじめて封を切って読み下して...

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大菩薩峠の事

冠省御無沙汰に打過ぎて居りまするがお変なき事と大慶に存じます。扨ていろ/\御無理を申して御煩せしてからもう三年に近くなります、小生が御音信をしたり、御訪ねをすると屹度《きつと》大人のお煩ひになることを恐れますが、でも小生の止むに止まれぬ願を更めてお胸にお止め下さいまし、あれからとても諦めねばな...

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病名は中耳炎

 そのうちに、沢田があの通り若くして斃《たお》れることになってしまった、病名は中耳炎ということであったが、なあに中耳炎のことがあるものか、ああいう無理の行き方をすればまいって了《しま》うのはあたり前である、沢正なればこそあれだけにやったのだ、普通の人なら少くとも五年前に死んでいたのだ、その後は意地だ...

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